- ボーロ・デ・メル
- 材料
- 調理過程
「ボーロ・デ・メル」
スパイスたっぷりの黒いクリスマスケーキポルトガルの首都リスボンから南西に1,000km先にあるマデイラ島だけで食べられている、約600年の歴史を持つ伝統スイーツ「ボーロ・デ・メル(Bolo de mer)」。「ボーロ」はケーキ、「メル」ははちみつという意味です。クリスマスのお祝いに「タマリンドリキュール(Licor de tamarindo)」というお酒と一緒に食べるのが定番なのですが、数年前にマデイラ島を象徴するものとして大々的に宣伝されたことから、今では観光客にも大人気。1年間も保存が効く、お土産にもピッタリのスイーツです。
ここで少しポルトガルのお菓子の歴史を──。実はポルトガルのお菓子のほとんどは、修道院で生まれました。当時の修道院は養鶏や養蜂をしていたため、貴重な卵や砂糖が手に入りやすいお菓子作りには最適な環境だったのです。ボーロ・デ・メルもマデイラ島でただ1つの修道院から生まれています。
ボーロ・デ・メルは小麦粉、糖蜜、バターなどの一般的なケーキの材料のほかに、アニス、シナモン、クローブ、黒胡椒といったスパイスをたっぷりと入れるのが特徴です。スパイス貿易で栄えた大航海時代の断片が感じられますね。
材料を混ぜたりこねたりといった調理過程は、全て手作業で行います。最初は水気が多くとろとろしていますが、糖蜜と生地がしっかり合わさってくると、だんだんもったりとした固さに変化していきます。
今回初めてボーロ・デ・メルを食べた私。焼き上がったケーキをナイフで切り分けようとしたところ、現地のご家族に「それはやめて~」と止められてしまいました。ボーロ・デ・メルは作るときだけでなく、食べるときもカトラリーを使わないそうです。どの国でも特別な料理は手で食べるのだなあ、と改めて感じた瞬間でした。
さて、糖蜜がしっかりと染み込んだ真っ黒いこのケーキ。一見とっても甘くて濃厚そうですが、食べてみるとやさしい甘さでスポンジはほどよくふんわりとしています。ちょっぴり刺激的なスパイスが癖になる味でした。